エンディングノートの書き方:何を書けばいい?見送りの希望の残し方まで、体験者がやさしく解説
エンディングノートを一冊買ってはみたものの、最初のページで手が止まってしまう。そんな方は少なくないと思います。何を書けばいいのか分からない、書くと縁起が悪い気がする、そもそも重たい気持ちになる。そのどれもが自然な感覚です。
私は15年前に母を海に散骨した体験者で、看護師として多くの見送りにも寄り添ってきました。このページでは、エンディングノートに書く項目と、書きはじめのコツ、そして「どう見送ってほしいか」という希望の残し方までを、できるだけ肩の力を抜いてお伝えします。完璧に埋める必要はまったくありません。書けるところから、少しずつで大丈夫です。
そもそもエンディングノートって、何のために書くの?
エンディングノートは、自分にもしものことがあったとき、残される家族が困らないように、必要な情報や自分の希望を書き残しておくノートのことです。遺言書のような法的な効力はありませんが、その分、形式に縛られず自由に書けるのが良いところです。
法的な効力がないと聞くと意味がないように感じるかもしれませんが、そうではありません。家族がいちばん困るのは、お金や手続きのことよりも、「本人がどうしてほしかったのか分からない」という場面だからです。私自身、看護師として、ご家族が「これで本当によかったのか」と迷いながら決断される姿を何度も見てきました。本人の言葉が一行あるだけで、残された人はずいぶん救われます。
エンディングノートに書く項目
書く内容に決まりはありませんが、家族が困りやすいところから埋めていくと、自然と実用的な一冊になります。大きく分けると、次のような項目があります。
自分自身の基本情報
氏名、生年月日、本籍、これまでの経歴など、自分の基本的な情報です。あわせて、加入している健康保険や年金の種類、かかりつけの病院やお薬の情報も書いておくと、いざというときに家族が動きやすくなります。
お金・資産のこと
預貯金のある銀行名(口座番号までは書かず、どこの銀行かが分かる程度で十分です)、加入している保険、年金、クレジットカード、契約しているサブスクなどです。暗証番号やパスワードそのものは書かず、「ここを見れば分かる」という手がかりだけを残すのが安全です。ノートは他人の目に触れる可能性もあるので、ここは慎重にしておくと安心です。
医療・介護の希望
もし判断が難しくなったとき、延命治療をどうしたいか、どこで最期を過ごしたいかといった希望です。ここは看護師としても、書いておいてよかったと言われることがとても多い項目です。家族が「本人ならどうしたかったか」を代わりに決めるのは、想像以上に重い負担になります。一行でも希望が残っていると、家族は「本人が望んだことをした」と思えます。
家族・大切な人へのメッセージ
伝えておきたい感謝の言葉や、残しておきたい思いです。うまくまとめようとしなくて大丈夫です。ふと浮かんだ一言で構いません。
そして、見送り方の希望
お葬式やお墓、供養をどうしてほしいか。これは、家族がいちばん迷い、いちばん助けられる項目だと、私は自分の経験から思っています。次の章で、もう少しくわしくお伝えします。
「どう見送ってほしいか」を残しておくと、家族は迷わない
私の母は、元気なころから「海に還してね」と話していました。当時はまだ散骨という言葉もそれほど一般的ではなくて、正直、私は聞き流していた部分もありました。
でも、いざ見送るときになって、その一言にどれだけ救われたか分かりません。お墓を建てるべきなのか、海に還すべきなのか、親戚にどう説明すればいいのか。迷いそうな場面はいくつもありましたが、そのたびに「母がそう望んでいたから」と、まっすぐ前を向くことができました。母の希望が、そのまま私の背中を押してくれたのです。
だからこそ、エンディングノートには、見送り方の希望をぜひ書いておいてほしいと思います。書いておくと安心なのは、たとえば次のようなことです。
- お葬式はどんな形にしたいか(家族葬にしたい、宗教にはこだわらない、など)
- お墓に入りたいか、それとも海洋散骨や樹木葬など自然に還る方法を希望するか
- 散骨を希望する場合、どの海がいいか、家族に一緒に立ち会ってほしいか
- 供養やその後のことで、家族に負担をかけたくない気持ちがあるか
とくに海洋散骨のように、お墓を持たない見送り方を望む場合は、その希望を必ず言葉で残しておくことをおすすめします。まわりに前例が少ないぶん、家族が「勝手に決めていいのだろうか」と迷いやすいからです。「私はこうしてほしい」という一行が、その迷いをそっと解いてくれます。
書きはじめるコツ:完璧を目指さない
エンディングノートで手が止まってしまういちばんの理由は、「最初から全部きちんと書こう」としてしまうことだと思います。全部を一度に埋める必要はありません。書きやすいところから、少しずつで大丈夫です。
私がおすすめしたいのは、次のような始め方です。
- まずは自分の基本情報と、かかりつけの病院・お薬のことだけ書いてみる
- 次に、家族がいちばん困りそうな「お金がどこにあるか」の手がかりを書く
- 気持ちが落ち着いている日に、見送り方の希望を書き足す
- ときどき読み返して、気が変わったら書き直す
大切なのは、一度書いて終わりにせず、折にふれて見直すことです。気持ちも状況も変わっていくものなので、鉛筆で書いたり、書き直せる形にしておくと気楽に続けられます。
書く場所は、市販のエンディングノートでも、普通のノートでも、なんでも構いません。大事なのは中身であって、立派な一冊であることではありません。
書いたあと、どこに保管する?
せっかく書いても、家族に見つけてもらえなければ意味がありません。かといって、お金や医療の情報が入っているので、誰でも見られる場所も心配です。
おすすめは、信頼できる家族に「ここに置いてある」とだけ伝えておく方法です。中身まで話すのが照れくさければ、「もしものときは、この引き出しを見てね」と場所だけ共有しておけば十分です。本人が元気なうちに、置き場所だけでも伝えておくと、いざというときに確実に届きます。
貸金庫にしまい込んでしまうと、かえって家族が取り出せずに困ることもあるので、そこは避けたほうが安心です。
まとめ:書けるところから、少しずつ
- エンディングノートは、残される家族が「本人はどうしてほしかったか」で迷わないためのもの
- 基本情報・お金の手がかり・医療の希望・メッセージ・見送り方の希望を、書けるところから埋めていく
- とくに海洋散骨などお墓を持たない見送り方を望むなら、その希望は必ず言葉で残す
- 完璧を目指さず、折にふれて見直す。保管場所は家族に伝えておく
母の「海に還してね」という一言が、私をどれだけ支えてくれたか分かりません。あなたの一行も、いつか大切な人の迷いを、そっと軽くしてくれるはずです。堅く考えず、今日書けるところから、一行だけでも始めてみてくださいね。
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